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「えっ?わっ!……ぷっ」
今度は両腕が美穂の身体を包み、顔は彼の胸に衝突。
「ごめんね。ハンカチ持ってないから泣き終わるまでこうしてあげる」
「はっ?!ちょ、ちょっとっ」
暴れても男の力に敵う事なんてあり得なくてその腕は更に強さを増した。
「いいから、泣いたらすっきりするよ」
「い、いえっ!いいです!離してっ!!」
そう言うと彼は少し力を緩めて「いいの?」と聞き返すから美穂は力一杯「いいですっ!」と答えた。
「そっか。ごめんね、君のファーストキス奪っちゃって」
にっこり笑って言うその言葉に誠意の欠片なんて感じられなくて、思い出すだけでまた涙が滲む。
そんな美穂に彼は左手を美穂の腰に巻き付けたまま、右手で美穂の涙を掬った。
「でも、ファーストキスなんて気にすること無いよ」
綺麗な笑顔でそう言うと、彼の顔が美穂の視界を覆う。
…チュッ
チュッ
チュッ――
まるで小鳥が餌を啄むように彼の唇が音を立てて美穂の唇に3度触れる。
今の、なに?
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