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「やっと……卒業だな。待ち遠しかったよ」
「…うん」
卒業した私はもう『生徒』じゃない。
私たちは生徒と教師という関係から解放されたようなものだった。
「もう…生徒じゃなくて、ただの1人の女だよな?」
和馬はそう言って私の頬に手を滑らせた。
私の頬を優しく大切そうに撫でると、照れるように笑った。
「そうだよ。私、ただの高橋美帆だよ」
「違うだろ?」
「え?」
「……有田美帆になるんだろ?」
有田美帆。
それって、聞いただけでニヤけてきちゃうよ。
私は緩んだ頬を隠すように、和馬の手の上から自分の手を重ねた。
「……美帆。指輪、かして」
和馬は私の首にかかる、ネックレスを撫でるとそう言った。
私はネックレスを外し、指輪を和馬の手のひらに置いた。
「……手、出して」
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