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ガラカラ───
「いたいた。探したよ有田」
「……藍川?」
放課後。
私は一人、有田を探しに数学教室に足を踏み入れた。
予想通り、有田は数学教室にいてタイミング良く今は一人みたい。
しかし、有田は私の顔を見ると何か不安そうな表情になる。
……まだ、私は何もやってないっての。
「なによー。ちょっと遊びに来ただけだって!もうすぐ卒業…だしぃ?」
「……卒業、だね」
私が意味ありげにそう言って笑うと有田は苦笑いをした。
そんな有田にかまわず私は近くにあった椅子に腰かけていつものように足を組んだ。
「初めに、おめでとうございます。私も嬉しいよ有田」
「……聞いたか」
「聞いたわよー。もう、凄く幸せそうだった」
私たちは『美帆』という言葉は出さずに会話を続けた。
いつ、誰が、何処で聞いてるかわからないからね。
いくら卒業間際だっていっても安心できない。
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