平凡を平々凡々に過ごす。

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俺の席は一番窓際列のど真ん中。 此処に限っては窓際であっても皆羨ましがらないポジションだ。 なんせ窓際は窓際でも教室の丁度真ん中に位置するライン、此処だけ窓がない。 前の奴も後ろの奴も、窓から差し込む太陽光に当てられて夢の世界へと引きずり込まれて行くというのに、俺はそんな事もなくぼんやりと授業を聞いていた。 物理の担当教師はもう定年を迎えた非常勤講師のお爺ちゃんだ。授業で寝ていても気付かない。 そんなお爺ちゃん先生が黒板に公式を書きながら説明をしている。 今日も右上がりに文章は並んでいた。 内容を板書するだけの授業は退屈だ。テスト前に一気に勉強するから、普段のどの授業も眠気を誘う。 欠伸を一つ噛み殺して黒板を見れば、お爺ちゃん先生の皺くちゃな指が黄色のチョークを掴んでいた。 この先生は大事な部分を赤チョークではなく何故か黄色のチョークで書く。 生徒側としては見辛いことこの上ないのだが文句を言うわけにもいかない。 赤ペンを取り出そうと愛用している青いチェック柄で布製の筆箱のチャックを開いた。 「……?」 赤ペンがない。 否、それどころか筆箱の中は何故かブラックホールのような空間になっていた。 筆箱の深さなんてたかが知れている…筈なのに、真っ暗な空間は本当に底が見えなかった。 これはなんだ。 夢か、夢なのか? ――取り敢えず、関わり合いにはなりたくない。 チャックを閉めて何事もなかったことにしてしまおうと、ゆっくりチャックに手を伸ばした。
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