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「なん…で」
『『これ、なんだかわかる~?』』
一瞬にして血の気が引いた。
「永井の…メガネ…」
電気に反射して光るレンズには少しヒビがはいっていて
あたしを平常心でいられなくするのに
十分なものだった。
『『あいつのあんな怖い顔はじめてみたよ』』
「……」
『『その紙袋、
俺にくれない?
あいつに許可もらってきたからさ~』』
「……永井に何したの」
『『ん~?俺は別になにも』』
汗の量が尋常じゃない。
冬のこんな時期に
こんなに汗かくなんて思ってもみなかった。
『怖い顔すんなよ~
その紙袋渡してくれたらなーんにもしないから』
どうすればいい?
彼が立っているのはピロティーの入り口側。
走って逃げても
確実にこの部屋の外にはでられない。
どうすれば…
ニヤっと笑うとその先輩はあたしに少しずつ近づいてきた。
「もっ目的は!!
目的はこの紙袋じゃないんでしょ!?
はっきりいったら!?
なにが目的なのよっ…」
ピロティーいっぱいに響き渡るあたしの声。
誰か気付いて
あたしの声に。
必死に願ってもピロティーに出入りする人なんてめったにいないから
そんなの不可能に近かった。
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