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「空、ですか」
「私は元帥になったが、今も思うんだ。自分はまだ地面に足がついている。空に向かって飛びすらしていない、とね」
忠勤で寡黙な印象が強いゼロが妙に饒舌だった。
「お二人の出会いはどうでした?やはり第一印象から、好感をもたれていたんですか?」
「いいや。恥ずかしい話だが、私はレイザを目の敵にしていた。それでも彼は私を助けてくれた」
「では、恩を感じているんですね?」
この問いに、ゼロはいまいちピンとこない様子で首を傾げる。
「……恩とは違うな。恩というよりは、親交が深まった……これもいまいちな表現だな。だが、とにかく距離は縮まった」
「言葉で表現できない関係なんですか?」
「レイザというのは、戦闘でも日常でも人の間合いに入るのが上手い。だからなんだろう。強く、そして好かれていたのは」
「もし生きていたら、帝国はどうなっていたと思いますか?」
「難しい質問だが、少なくとも平和だったろう。彼がいるまでは平和が続く。なぜなら勝てないからだ。私は今でも信じられないんだ。レイザの死という事実を……」
そう呟いたゼロの瞳は、またいつの間にか空を見上げていた。
まるで彼を探しているかのように。
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