パウロの手記⑯

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 残念だが、私はもう別の取材を始めなければならない。 結局、謎には全く迫れなかった。 心残りはあるが、仕方無い。 もしも新たな事実が分かったら、再びこの手記を書き始めようと思う。 「成果はありましたか?」 ブロの屋敷を去る時、美少女が私を呼び止めた。 いや、もう18歳の彼女を少女と呼ぶのは失礼か。 ユイ=ローゼン レイザに興味をもったきっかけ。 「記事に書けることは無かったよ。だから、また君への取材に戻るつもりだ」 「そうですか。またよろしくお願いしますね」 どうしてだろうか。 私は、彼女に対してインタビューすることを忘れていた。 今インタビューしようか。 ……いや 彼女の青い瞳は今、未来に向いている。 それを無理に過去に振り返らせる必要はない。 いつか真実が明らかになった時、インタビューを行えば良いのだ。 ガイアの町を歩いていると、いつにもまして中心部の商店街が賑わっている。 ガイアが共和国に侵攻された際に帝都への転移を防いだ騎士達の勇気を讃えた祝祭日らしい。 そういえば、このインタビューを受けた人達に悲しみは無かった。いや、無いという言い方は間違いか。 死別への悲しみよりも、彼等と過ごした時間の思い出のほうが楽しかったらしい。 みんな、笑顔のまま言っていた。 『ありがとう、と言いたい』 30年に満たない時間を生き 約5年という僅かな間、彼は世界の中心だった。 そして、消えてしまった。 だが、彼等と出会った人達は記憶している。 歴史には語られない全て。 彼が亡くした人を悼むために流した涙を 戦争に苦悩した悩みを 多くの人と分かち合った笑顔を きっと彼等は忘れない。
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