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「存在、なんて曖昧だわ。
皆が在る、と想ってしまったことが私を存在させたの……」
首に何か巻きつく感触を覚えた。
彼女が僕の首に手を回して締め付ける光景が脳裏に浮かぶ。
背中を冷たい汗が伝う。
「そんなの有り得ない。
在るものと無いものは決定的に違うじゃないか」
そう錯覚しているだけよ。
彼女は続ける。
私が存在することが、何よりの証拠じゃない……。
首に巻きついた何かが徐々に締まっていく。
息が詰まって、肺に激痛が走った。
おそらく、いや、確実に彼女は僕を殺そうとしている。
意識を朦朧とさせながら、そう思った。
私の喉を掻き切りたくなるような過去を作ったのは、あなた。
頭がおかしくなりそうな程の嫉妬を植え付けたのは、あなた。
私を産んだあなたが憎い。
僕の意識が途切れる直前、彼女が涙を流しているのを見た。
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