花火の下の文化部一同

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「ったく、遅ぇな……」 携帯の液晶が沈みかかった夕日を反射して、俺は思わず目を細めた。 時間を確認すると、もう30分は約束の時間を過ぎている。 しばらくして携帯に着信があった。 「先輩、すみません」 凛子が揚々と謝罪する。 おそらく、否、彼女は反省などしてはいない。 そんなことは天地がひっくり返ろうと有り得ないに決まっている。 「すぐ着きますから、楽にして待っていて下さい」 それだけ言ってから、反論の余地無く通話が切れる。 夕暮れと言えど季節は真夏日。 蝉の鳴き声けたましく、サウナのように蒸し暑いこの状況を、どうすれば楽にしていれるのだろうか。 そんなことを考えていると、およそ斜め下辺りに誰か居るのに気付く。 見ると、凛子の大きな瞳がこちらを捉えていた。 「きづかないなんて、注意力が散漫ですね」 「ああ。お前のせいで熱中症になったのかもしれない」 「それは大変。そんなことより、はやく行きましょう」 凛子は笑った拍子に、妙に尖った犬歯を覗かせた。 自慢じゃないが、俺は口論で凛子に勝った試しがない。 凛子は頭の回転の良いのを利用して、いつも周りの人間を言い負かせて好き放題やっているのである。 加えて天性と言うべき美貌を兼ね備えているので、大人でさえ彼女には手をこまねいているのだ。 それら要因が凛子を小悪魔、もとい悪女に仕立ててしまった原因だと俺は考えている。
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