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「――というわけなんです」
レイラの堅苦しい説明にふんふんと頷くツェーさん。本名はヴェレンツェスカさんだそうだが、なんだか偽名臭い気もする。
「なんだぁ、そんなことだったの? なんなら私が流行りの茸博士から、二度と起きられなくなる茸もらってきてあげたのにぃ♪」
「そりゃ本気かい?」
「ウフッ、冗談よ」
ツェーさんが色っぽくウィンクしてきた。普通にときめいた。
でも、なんだかレイラはばつの悪そうな顔をしている。おい、ウィンクだぞ気にいらないのか。
「その方はアレなんです。ええと、中尉の元上官であったマドニア・テレスト大佐のご子息、マリオ・テレスト大尉なんです……」
ああ成る程ね、みたいな顔をするツェーさん。
ようは俺がテレスト家を見返してやる機会をわざわざレイラが自分を犠牲にして作ったっていうお涙頂戴みたいな話なのか。ふざけんな。
「俺は務所に入ったら軍人なんぞ辞めてやると思ってた。けどよ、その務所でも腐らずに青臭い夢を見続けてる馬鹿がいて、っていうか皆そんな夢ばっかり見てる馬鹿の集まりだったんだけど。一応区分としては国家反逆罪になる連中だが、どいつもこいつも腐った上級貴族様に夢を叩き潰されてきた。ああ、八割以上は無実だ。自分のちっぽけな地位を守るため、国の柱となるべきものを駆逐する。それがこの国の現状だ。そんな腐りきった貴族なんぞ見返す価値もない。すまん結論、俺は降りる!」
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