プロローグ

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目の前に広がる惨禍。緋色の炎が休む間もなく侵略を続け、村は刻一刻と炭の塊へと姿を変えていく。 止まない阿鼻叫喚。女は我が同胞、いや同胞と呼ぶも汚らわしい獣達に凌辱され、子供達は殺されるか連れ去られるかの二択。抵抗をする男達は皆死んだ。私の手で皆殺しにしたようなものだ。 私は震えが止まらなかった。人は、こうも醜くなれるものか。地獄絵図の中の私は絶望と恐怖に動けなかった。 「よくやってくれたクルケッサ中尉。流石はイーグル家の嫡男と呼ぶに相応しい戦果だよ」 戦果? どう考えても私がしたことは戦禍だ。 上官として尊敬すべきであった獣が私を労うように肩を叩く。ふざけているのか。腸がこの地獄を作り出す炎に煮えくりかえされている。 「ふっ、初陣ではないだろう? 何をそんなに青ざめているんだ」 獣はいやらしい手を私の肩から離さない。下卑た笑みを浮かべながら、まだ呪言を吐き続ける。 「鬼死還の化物共はこうまでしないと死なないのは分かっているだろう。これは聖イストリア帝国万年に続く礎になるのだよ」 こんな、こんなことを、腐りきった外道の所業を繰り返すことが礎となる国など滅びてしまえ。私は心底そう思い、獣の手を取った。
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