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「はい」
1秒ほどだったろう、立ち止まってから、きびすをかえして正対するまでのわずかな時間、流れるような身のこなしが桐谷の眼に焼きついた。
間違いない、俺の眼は狂っちゃいない、こんなタマはそうそういない。
長いこと、生き馬の目を抜く業界で生きてきた俺だ、この子は確実にモノになる。
歳はハタチくらいだろうか、肌が透き通るように白い。
ハーフなのか、顔立ちが陰陽をハッキリと際立たせ、端正な鼻筋が、両の瞳と口許が形成するトライアングルの中央に貴く顕れている。
しかも、ほとんどノーメイクじゃないか。
どこに出かけるつもりなのか、申し訳程度に眉の形を整えているくらいで、睫毛も唇の紅みも一切手を加えていない。
それにしても、なんて綺麗な瞳をしているんだ。
大きく見開かれたその眼は、光に反射して薄い緑色にもみえる。
カラコンなどという、子供だましのオモチャじゃない。
プロポーションだって、抜群と言える。
背丈はあるし、顔の造りが小さく、手足が長い。
国内のモデルは、ただ細いだけのような子が多いが、この子は胸もある。
商売柄、つめものなんか入れてもすぐ見破れるのだ。
姿勢もいい。
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