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さすがに、今ではクスリ漬けにして系列の店にブチ込んで客を取らせる、みたいな酷いところは聞かなくなったが、それでもこの不景気の最中にヒトヤマ当てよう、などと目論む輩の考えることは、どっちに転んでもカネをむしり取れるような周到さがある。
そんなのにひっかかる方が愚かなのだが、地方から単身上京してくるような子の一部には、如何せん免疫がないため、そういう被害が後を絶たない。
だからという訳ではないが、れっきとしたスカウトとしての矜持(きんじ)を保つ上でも、白いワイシャツに濃紺のスーツといった地味目な格好は、信用の第一前提と心得ていた。
もっとも、目の前にいるこの女性は洗練されている雰囲気が充分すぎるほど伝わってきていたので、そんな心配もないだろうと若干、タカをくくっていたが。
一瞬、桐谷を見据えると彼女は軽く微笑み、静かにつぶやいた。
「はじめまして、ご丁寧にありがとうございます」
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