遭遇

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ただのガラクタ展にしか思えなくなってきたフォーラムを後にして、桐谷は彼女を連れ、すぐ近くに構える自分のオフィスに同行してもらうことを考えていた。 相手の同意がある以上、本来ならばどこかの喫茶店にでも立ち寄って、基本的な交渉を進めるのだが、幸いなことに今回のフォーラムとオフィスは徒歩で5分ほどの距離で結ばれており、余計な手間を省く上で好都合だった。 ましてや、相手はそうそうお目にかかれない宝飾の原石と睨んだ逸材だ。 早く彼女のことを把握したかったし、そのうえで時間をかけずに一気に話を決めてしまいたかった。 そのくらいの魅力がこの子にはある。 もっとも昨今の禁煙・分煙化の流れで、へヴィースモーカーである桐谷が落ち着ける場所が徐々になくなってきたという事情も少しはあったが。 「すぐそばに、私の事務所があります。 よろしければそこでお話させてもらいたいんですが」 半歩ほど先を歩いていた桐谷が切り出すと、彼女は静かにうなずいた。
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