戦慄

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―奇妙な胸騒ぎの元凶はこいつなのだろうか。 すぐ横の鉄扉を開ければ、事務所の入り口が正面だ。 その男から醸し出されている雰囲気が、偶然などではなく、自分達を待ち構えていたことを伝えていた。 心臓の急激な高まりを悟られぬよう、そっと息を飲みながら余所行きな笑顔を浮かべつつ要件を尋ねようと、口を開こうとした瞬間、男から言葉が投げかけられた。 「ベレーザの桐谷社長でいらっしゃいますね?」 鼓動の上昇だけではない、久しくかいたことのない冷たい汗が前髪の生え際から吹き出してくるのを桐谷は感じた。
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