戦慄

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街灯がかすかに差し込むだけの真っ暗なオフィスは誰もいない。 所属するタレントのマネージメントを担当する若い社員は温泉ロケに同行して不在、ひとりだけいる女性の事務員はすでに帰っていた。 以前は外出時に逐一、業務連絡をくれたものだが、ここ最近はろくすっぽだ。 思うように仕事が取れず、ヒマになってきているせいもあるが、もうすぐ辞めるつもりなのかもしれない。 それならそれで、構わないが。 すぐに入り口そばの電源パネルをオンにして室内の蛍光灯を照らした。 平静を装いつつも、得体の知れない2人組と一瞬でも暗闇を共有するのにはためらいを感じたからだ。 広いとは言えない、事務所の一角にこしらえた応接スペースに2人を通し、ソファーに腰掛けさせた。 ゆっくりと、同時に彼らは身体を沈める。
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