戦慄

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いずれにせよ、軽くは無い不安と動揺を抱えたまま2人と対峙していた桐谷は、何から喋って良いものか思案を巡らせていたが、ウラックの方から静寂を切り裂いてきた。 「今から話すことを聞いていただけますか・・・にわかには信じられないことだとは思いますが、我々はいたって正気ですし、全て事実です。 そしてあなたには何も不利益なことはありません。 むしろ我々を信用していただければ、見違えるような未来をお約束できると考えていますが」 「見違えるようなミライ?」 「巨万の富、とでも言い変えたほうがよろしかったですか?」 口許を緩めながらも、冷淡に返すウラックに安い疑惑がチラついた。 ―こいつらは、なにか怪しい新興宗教の活動家かなんかなのか或いは、アンダーグラウンドの世界に潜伏して、大掛かりな三文芝居でも打ってカネをむしり取ろうとする新手の詐欺集団か? 一瞬、そんな邪推も頭をよぎったが、桐谷はまだ冷静に状況を分析できていた。
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