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その日、都内の芸能プロ・社長の桐谷は、青山に在るアートフォーラムで時間を潰していた。
インテリア・アートを手がける友人の招きに応じて、絵画展に足を運んでみたのだが、どうにも理解できない幾何学模様だらけの作品に若干、辟易していてコレクションの半分も観ずに、喫煙スペースで煙をくゆらせていた。
―どうせ、おつきあいだ。
その冷めきった表情と、鑑賞に訪れたファンに囲まれて顔を上気させている友人が熱く美を語っている様子とは、かなりの温度差がある。
新感覚のオプ・アートだとか何とか、よくわからないが、昔受けた恩義を返しにちょくちょく来てるだけであり、それももう、いい加減煩わしい。
適当に挨拶を済ませて、失礼しようかと腰を上げた瞬間、桐谷の視界に飛び込んできたものは、例えようのないほどの華を全身から放射している、若い女性であった。
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