プロローグ

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「あー、終わった終わった」  太陽が少し傾き、辺りがほんのり薄暗くなりはじめた頃。歩道をてくてくと歩きながら一人の少年が思い切り背伸びをした。すると左から、 「テストが終わっても、それで終わりじゃないんだよ。太一ってば、いっつもテスト終わったら、勉強したこと全部忘れちゃうんだから」  という、少し冷たい言葉が飛んだ。 「そーそー、太一はただの運動馬鹿だからな。勉強してもすぐ忘れるから意味がないんだよな」  今度は右から気の抜けた声が飛ぶ。それらに対して少年は口を尖らせ反論する。 「うるせーよ。麗奈は俺と違って賢いから、勉強にマジになって勉強できるんだよ。俺は向いてないからこれでいいの。つーか悠也、てめぇ、偉そうなこと言ってっけど、毎回おまえは俺より順位下だろーが」  少年は左を歩く少女、麗奈に文句を言い、右を歩く少年、悠也にボディーブローを繰り出した。 「ごふっ!?」  悠也は変な声を出し、腹を押さえてその場にうずくまる。  この少年の名前は友城悠也(ともしろゆうや)。 「あーもう、また悠也が余計なこと言うから~」  うずくまっている悠也を見下ろしながら言う彼女は依川麗奈(よりかわれな)。そして、その二人に挟まれるようにして、肩から黒いバッグを提げているのが天神太一(あまがみたいち)。三人は地元風篠市の高校、桜ヶ丘に通う二年生で、太一と麗奈は所謂幼馴染というやつなのだ。悠也は中学からの馴染みである。しばらく太一は悠也を見下ろし、 「帰るぞ」  無理矢理立たせて、家路に着いた。
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