はじめまして

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おそらく、あの赤毛はまた来る。 そう思った茉代はそそくさと洗面所に向かう。 風呂場からシャワーの音がする。 だが家族の中に朝風呂に入るものはいない。 面倒ごとは嫌なので風呂の入り口が開かないように細工し、携帯電話で110番。 身だしなみを整えた茉代は食卓に入る。 いつものように父さんは新聞紙を顔が隠れるほど大きく広げ、母さんは台所で朝食を作っていた。 「おはよう」 両親に朝の挨拶を告げる。 「おう」 「おはよう、翔」 「お兄ちゃん、おはよー」 両親の挨拶に赤毛が紛れ込んでいた。 赤毛がもう戻ってきていた。 「パンツは見つかったか?」 驚いた様子もなく、茉代がイスに座りながら聞く。 「うん!お空から降ってきたの!」 「ハハッ、お前ってバカだな」 「もう…お兄ちゃんのいじわる!」 「俺は正直者だからな」 母さんが四人分の朝食を食卓に並べる。 「ところでお前誰だ?」 茉代がウインナーを刺したままのフォークで赤毛を指す。 「えへへ、私はお兄ちゃんの妹だよ」 向けられたフォークのウインナーを食べる自称妹。 「俺に妹はおらん」 寂しくなったフォークを恨めしげに眺める茉代。 ちなみに茉代の家族構成は両親と茉代 翔、そして犬の三人と一匹構成であり、茉代が言うことが正しい。 「そうねえ、母さんも産んだ覚えはないわね」 朝食を作りながら母さんが言う。 自称妹を含めた四人分の朝食が並んでいるのに誰の飯を作ろうというのか。 「ほら、うちは野良の妹を歓迎する気はないんだ。出てけ」 茉代の言葉に自称妹はふてくされ、ぶぅと頬を膨らませる。 「ねー、お父さん。私もいていいでしょー?」 ねだるような甘えた声で父さんに牙を剥く自称妹。 それを茉代がさえぎる。 「既に茉代家の多数決で妹は不要だ。だから出てけって」 茉代はそう言い終えると、自称妹が涙目になる。 だが茉代は気にしない。 「私が必要だって言ってるからまだ決まりじゃないもん!」 涙声で訴える自称妹。 「父さんがお前に同意するわけがないだろ、バカ」 やはり茉代は気にしない。 いくら嫌われようが、好かれようが、一日経てば意味はなくなるから。 だから茉代は一日を面倒ごとなく過ごすのを優先する。 そのためなら誰が泣こうが知ったことではない。
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