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「俺は…娘が欲しかったぞ」
新聞紙の向こうからボソッと呟きが聞こえた。
雨模様だった自称妹の顔は一気に晴れ上がる。
曇り空だった茉代の顔には嵐が吹き荒れた。
「やったー!やったよー!仲間入りだー!家族入りだー!」
女と山の天気は表情をころころ変えると聞いたが、こうも忙しなく変わるのも珍しい。
父さんが許したところでまだ二人が反対しているのだが、赤毛の性格を考えるともう何を言っても止まらないだろう
「正しくは養子だ。それに役所に手続きしない限り正式なもんじゃない」
茉代はそう言い、そそくさと朝食を済ませ、鞄を拾い、足早に玄関へと向かう。
面倒事から逃げるため。
学校に向かう間は特に何もなかった。
いつも通りの道、風景、友人、テロリスト、宇宙人、天使。
気にすることなど何もないのですぐに学校へ着く。
机の上に鞄を置こうとすると、机の上に先客がいた。
自称妹が水着で決めポーズをとっていた。
茉代は自称妹を持ち上げる。
「もう、お兄ちゃんったら。大胆なんだから」
頬を染めながら自称妹が腕の中でくねくねと動く。
「いってらっしゃいませ、ビッチ様」
茉代が見送りの言葉を述べ、三階の窓から投げ落とす。
「いやああぁぁぁ…」
悲鳴をあげて落ちたが元気に戻ってきた。
「お兄ちゃん、冷たすぎるよー。兄妹なんだしもっと密接な関係になってもいいと思うよ?」
怪しい動きのする手つきで、じわじわとにじりよる水着姿の自称妹。
「面倒、邪魔、消えろ」
三言で切り伏せた。
「それに生徒でもないのに学校来んな」
と茉代は言ったが、今日から転入生として席は茉代の隣に決まった。
名前は自称 妹(じしょう まい)で妹と呼べばいいらしいが今日一日は自称妹で貫き通す。
授業を受け、銃弾を受け、やっと昼休み。
「お兄ちゃーん!」
「どおりゃー!」
未だに水着姿の自称妹が抱き着こうとするが、窓から投げ捨てる。
友人から一緒に食べようと誘いがあったので屋上で食べることに。
茉代が楽しそうに屋上の扉を開く。
二人の宇宙人が円盤を投げて遊んでいた。
いたが邪魔なので屋上から投げ落とす。
午後の授業は天使が学校を半壊させたのでなくなった。
下校するときは友人、テロリスト、宇宙人、天使、自称妹が追いかけてきたので今日初めての全力疾走で振り切り、帰宅。
「おっかえりー、お兄ちゃん」
自称妹には自宅がバレていたので先回りされていた。
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