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茉代は家に着いたが暇なので犬の散歩に行くことにした。
「ケロ助、散歩に行ってやるぞ」
「ワン!」
庭の小屋から元気に中型の黒犬が出てくる。
実は元の名前はケロベロスだったが、呼びにくいためケロ助が定着した。
「わん!」
茉代の後ろで聞き覚えのない犬の鳴き声がした。
首輪を着けた自称妹が四つん這いでいた。
とりあえずケロ助の予備のリールを繋ぐ。
「お前なんで首輪着けてんだ?」
「わん!」
茉代は聞いたが、自称妹からの返事に人間の理性は感じられず、代わりに野生が満ち溢れていた。
考えるのが面倒になった茉代は二匹の犬を連れ、散歩に出た。
少し歩き、近所の自然公園に入る。
広い芝生を発見し、犬のリールを外す。
お座りで待機する犬の前で、茉代はフリスビーを取り出す。
途端に尻尾がちぎれんばかりに振りまくる犬。
「よし、まずはケロ助からだ。取ってこい」
「ワン!」
茉代の手を離れ、回転しながら飛んでいくフリスビーを追い掛け、見事に空中でキャッチするケロ助。
ケロ助はフリスビーを茉代の元まで持っていき、茉代も満足そうにケロ助の頭を撫でる。
「わんわん!」
自称妹が次は私だと吠える。
「よし、次は自称妹だ。…取ってこい!」
茉代がフリスビーを投げる。
だが、先程のフリスビーとは全てが違った。
回転とスピードが桁違いで、フリスビーと空気の摩擦でフリスビーは炎の球となり、目にも止まらぬ速さで飛んでいく。
直線上にあった木は全て焼き切られ、大きな音を立てて倒れていく。
これはもう、フリスビーではなかった。
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