雪は降り、また溶けて。

雨が降る。

「描けたのか？」恵介は、絵の具だらけの勇次の指先を見ながら言った。

「うーん、もう一息って感じかな」

勇次は、肩の凝りをほぐすように、首を左右に曲げながら答えた。

恵介は、勇次の描く絵が好きだった。

この店の客のひとりだった勇次の絵を、たまたま雑誌の挿し絵で見つけた。なんとも優しい色彩のイラストに癒やされていくのを感じた。

そして、まだ陽の目を見ることがなく、生活のためにバイトに明け暮れている勇次の力になりたいと、部屋を提供することを申し出たのだ。

「今回の仕事、連載なんだろ？がんばれよ」

「がんばるよっ、チャンスだもん！ だから恵ちゃん、メシ！」

そう言って笑う勇次に、恵介は「はいはい」と言いながら、野菜スープが入った鍋を温め直す。

そして、厚切りのパンに特製のピザソースを塗り、スライスした玉ねぎとマッシュルーム、ピーマン、イタリアンソーセージ、チーズをのせて、トースターに入れた。

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