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口は悪いが、ちゃんと受け止めてくれる……。そんな恵介は、みんなから頼られる存在だ。
そして恵介にとって、自分の目標に向かい、がむしゃらに突き進む勇次は、全力で応援したい仲間だった。
勇次は、自分の空腹を満たすために作られているそれが、焼き上がるのを待つだけになったのを見届けると、安心したように立ち上がり、さっき恵介が眺めていた窓に近寄っていく。
「あー、こりゃあ雪になるかもね……。あかり、傘持って行ったかな……」
「アイツ、どこ行ったの?」
「音楽教室。振替レッスンだって。開店準備までには帰るって言ってたけど」
勇次の言葉を聞きながら、恵介は店の隅にあるピアノに目を向ける。
古いアップライトのこれは、この店の前のオーナーがインテリア代わりの置いていたものだ。
処分するにも金がかかるので、酒のボトル置き場となっていた。
あかりが、あの一言を言うまでは――。
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