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雨が降る。
「よく降るな……」
恵介はカウンターの中から、窓ガラスの外を伝う滴を眺めて呟いた。
夕方から降り出した雨。
天気予報では雨は深夜からだと言っていたのに。
彼はカウンターから出ると、壁際の棚一面に並んだレコードの前で少し考えた後、一枚のアルバムを取り出した。
黒いレコード盤の表裏を確かめてプレーヤーにセットすると、そっと針を落とす。
スピーカーから流れるジャズの音色が、さして広くない店内に広がっていく……。
軽やかなピアノと、温かいベースの音に、時折はぜるようなアナログ盤特有のノイズが、また心地いい。
恵介はラッキーストライクのボックスから一本抜き、火をつけた。
深く吸い込んだ煙を吐き出せば、白い煙は店の薄暗い空間に向かい、ゆらゆらと消えていく。
その時、二階からダンダンと駆け下りる足音――。
続いて、ゆったりとした時間を打ち破るかのように、店の奥の扉が乱暴に開いた。
「恵ちゃん、腹減った～！なんかない？」
「もう少し、静かに入ってこられねぇのかよ？」半ば呆れながら、恵介が声をかける。
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