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「珍しいね、まきちんがこんな所にさ」
「まあね。ほれ、座んなさいな」
「はいよー」
家の近所の、団地の建物と建物の隙間にある公園。いや、ベンチと小さな小さな滑り台しかないこの場所を公園と言ってしまって良いのか分からないけれど。
まきちんに促されるままにベンチに腰掛ける。まきちんも座って、しばらくの間。校門を出た時より少し低い位置にある太陽を眺めて、一息つく。
変なの。まきちんは無駄なことが嫌いな、かっこいい合理主義者とばかり思っていたんだけどなあ。もしかして、「ゆかりと一緒に夕日を見たかったの」なんて言い出すんじゃなかろうか。まさかね。そう言ったなら、明日は槍が降る。間違いなく。
「まきちん、まさか『ゆかりと夕日を見たかったのー』なんて言わない……、よね?」
「言って欲しい?」
「すみませんでした。
いや、そうじゃなくてさ。えっと」
「早く言え」
「まきちん、怒ってる?」
「……はぁ」
それはそれは大きなため息。肺に入ってた空気全部を吐き出しちゃったんじゃないかなってくだらないことを考えていたら、唐突に肩を引き寄せられた。ガチン。まきちんとぶつかって、あたしの肩がそんな音をたてた気がした。地味に痛い。
「いたいよー、まきちん! か弱いあたしの身体に何をして」
「別に、ゆかりには怒ってない。私には腹がたつけど。
あ、違う、やっぱりゆかりに腹たつわ」
「え?」
「なんで、なかないの?」
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