Fatal Falling Farewell

2/3

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
あ、落ちる と思った時には、落とされていた。  背中に、特に肩のあたりに、衝撃。薄い大きなベニヤ板で叩かれたような。じわりと痛い。 そのまま、身体が沈んでゆくのが分かる。 泳いで遊ぶのには冷た過ぎる水に全てを包まれ、直前まですぐ近くにあったはずの空気が遠くなってゆく。 光も、遠くなって。   * 「もう、やだ」  突き落とされる直前に聞いた言葉は、この水よりずっと冷たいものだった。 そんなふうに言われることを、というか、こんなことをされるようなことをした覚えは無い。  強いて言えば、最近『忙しい』という理由で、彼女に会っていなかったことだろうか。  今日は久々に休日だったし、会おうという誘いを断る理由が無かったし。 彼女の家に行った。 「3月の海を見ながら話したかったの」  崖の淵で、こちらを見ずに海を見て、嬉しそうにというよりむしろつまらなさそうに、「だからこんなとこまでつれて来たの」と、続けて呟く彼女。 その後は……、確か、「忙しかったんだね?」だったか。 「あぁ。 悪かった」 とは言った。 そう思っていたかは分からない。自分でも。  嫌いになった訳じゃないんだ。 ただ、少し疲れていただけで。  こう言っておけば良かったのか? そういうものでもないのか?  
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加