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灰色の空の下。
クリスマス間近の12月。
高校生最後の冬。
忙しなく行き交う街の人たちを見つめ、私はふと溜め息を吐いた。
三浦優奈17歳。
ただいま現実逃避の真っ只中である。
窓の外を見つめ、色とりどりに飾られたイルミネーションに目を奪われるふりをしながら、本日何度目かの溜め息を吐いた。
暖かい室内に居るというのに、この身の毛のよだつような寒さはなんだろう。
理由は明快。
店内の、私の向かい側に座る友人たちから注がれる、氷のごとく冷たい視線を私が感じているからだ。
現実逃避の理由もこれだ。
「ゴホン」
あからさまな分かりやすい咳払いが聞こえ、私はついに現実と向き合うことにした。
これ以上は命に関わる。
「あ―…そろそろ期末テストですけれども……」
窓から友人二人に視線を戻した私だったが、まともに二人を直視出来ず、若干手元に目線を落とした。
めちゃくちゃ怖いです、お姉さま方!!
叫びたくなるのをぐっと堪え、それでも私は笑ってみせた。
「勉強会、どうしましょう……?」
友人その一、柿村亜利沙と。
友人その二、神宮寺実花とを交互に見やるが、どちらともものすごい私を睨んできている。
痛い。
視線とか空気とかが、ものすごく痛い。
全ての悪の根元、学期末テストを思い、私はまたも溜め息を吐いた。
もう数えられないほど、今日は溜め息ばかり吐いている。
なんだってこんなことになっているのか。
それも単純明快だ。
勉強会をするかしないかで、友人二人が対立したからだ。
元々、テストがある度に勉強会を設けていたから、今回も勉強会をすることに私は異論は無かったのだが。
亜利沙が今回ばかりは集中したいと言い出したのだ。
それに反論したのが、一人じゃ勉強に集中出来ないと泣きわめいた実花だった。
正直、私としては本当にどっちでもいい。
のに。
『こうなったら優奈が決めて!!』
と、問題を丸投げされた。
中立であろうとしたが為に渡された決定権。
ぶっちゃけた話、まじ要らない。
そんなこんなで現実逃避から連れ戻され、今に至るのだが………。
「あ―…」
痛い痛い。
どうしてそうも睨んで来るんだ君たちは!!
問題を任せたのは二人なのに、まるで私が悪者みたいだ。
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