4人が本棚に入れています
本棚に追加
私はとりあえず考えた。
現実逃避をしながらも、実は考えていた。
街行く人に少し涙目で助けを求めながらも、しっかり考えていた。
ただその決断を口にする勇気が無かっただけだ。
それも時間の問題。
私はやや諦めにも近い感情を抱きつつ、先ほどから変わらず私に睨みを効かせる友人二人に、ごくりと乾いた息を飲んで口を開いた。
「……勉強会、しよっか」
私に選択を委ねたのはこの二人の方だ。
文句は言わせない。
考えに考え抜いた結論なのだ、反対だとは言わせやしない。
言い切った私に対し、二人からそれぞれの声が上がった。
「マジでか!!」
「ぃよっしゃぁああ!!」
店の中だと言うのに本気で叫ぶ二人に、私はもはや苦笑した。
マスターと有子さんがものすごいこちらを見ている。
少し、恥ずかしい。
だれる亜利沙に、ガッツポーズを取る実花。
でも結論さえ言えば後はすごく楽になり、私は今まで現実逃避していたのも忘れ、次々と案を出してみた。
「でさ、今まで3日だった勉強会を1日に減らして、その1日で集中して要点をまとめてみるってのはどうかな」
これなら、二人の希望に遠からずも合っているんじゃないかと思う。
「後はお昼休みにちょっとした復習とかどうかな……」
という、私の提案に、二人の反応は逆転した。
「それなら良い、そうしよう!!」
「1日!?マジでか!!」
またも叫ぶ友人二人。
ぶっちゃけそろそろ他のお客さんに迷惑になりそうだ。
案の定、有子さんが何事かとテーブルまでやって来てしまった。
「何なに? どうしたのこの騒ぎ」
騒ぐ亜利沙と実花に苦笑を零しながら、有子さんはポットを片手に身を乗り出してくる。
まあ冷静に考えて、喫茶店の中で騒ぐ私たちが悪い。
甘んじて注意を受けよう。と私が口を開いた時、亜利沙が一瞬にして態度を変え、頭を下げた。
「いえ、スミマセン。恒例のごとく勉強会について話していたら、つい興奮してしまいまして」
あまりの変わりように、隣で実花が口をパクパクさせている。
私も思わず笑ってしまった。
「スミマセン。ちょっとテンション上げすぎました」
ぎこちなく頭を下げた私に、実花も続いて頭を下げた。
とりあえず、迷惑行為は控えましょう。
という空気が流れている。
最初のコメントを投稿しよう!