―優奈―

3/17
前へ
/24ページ
次へ
私はとりあえず考えた。 現実逃避をしながらも、実は考えていた。 街行く人に少し涙目で助けを求めながらも、しっかり考えていた。 ただその決断を口にする勇気が無かっただけだ。 それも時間の問題。 私はやや諦めにも近い感情を抱きつつ、先ほどから変わらず私に睨みを効かせる友人二人に、ごくりと乾いた息を飲んで口を開いた。 「……勉強会、しよっか」 私に選択を委ねたのはこの二人の方だ。 文句は言わせない。 考えに考え抜いた結論なのだ、反対だとは言わせやしない。 言い切った私に対し、二人からそれぞれの声が上がった。 「マジでか!!」 「ぃよっしゃぁああ!!」 店の中だと言うのに本気で叫ぶ二人に、私はもはや苦笑した。 マスターと有子さんがものすごいこちらを見ている。 少し、恥ずかしい。 だれる亜利沙に、ガッツポーズを取る実花。 でも結論さえ言えば後はすごく楽になり、私は今まで現実逃避していたのも忘れ、次々と案を出してみた。 「でさ、今まで3日だった勉強会を1日に減らして、その1日で集中して要点をまとめてみるってのはどうかな」 これなら、二人の希望に遠からずも合っているんじゃないかと思う。 「後はお昼休みにちょっとした復習とかどうかな……」 という、私の提案に、二人の反応は逆転した。 「それなら良い、そうしよう!!」 「1日!?マジでか!!」 またも叫ぶ友人二人。 ぶっちゃけそろそろ他のお客さんに迷惑になりそうだ。 案の定、有子さんが何事かとテーブルまでやって来てしまった。 「何なに? どうしたのこの騒ぎ」 騒ぐ亜利沙と実花に苦笑を零しながら、有子さんはポットを片手に身を乗り出してくる。 まあ冷静に考えて、喫茶店の中で騒ぐ私たちが悪い。 甘んじて注意を受けよう。と私が口を開いた時、亜利沙が一瞬にして態度を変え、頭を下げた。 「いえ、スミマセン。恒例のごとく勉強会について話していたら、つい興奮してしまいまして」 あまりの変わりように、隣で実花が口をパクパクさせている。 私も思わず笑ってしまった。 「スミマセン。ちょっとテンション上げすぎました」 ぎこちなく頭を下げた私に、実花も続いて頭を下げた。 とりあえず、迷惑行為は控えましょう。 という空気が流れている。  
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加