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と思ったのに、意外や意外。
有子さんは楽しそうに笑って、空である私たちのティーカップに紅茶を注ぎ始めた。
「有子さん!?」
驚いた亜利沙が慌てて有子さんを見上げるも、あっという間に三人のティーカップは熱々の紅茶で満たされてしまった。
「若いって良いわよねぇ。私にもそんな時期があったわぁ」
とかひとりしみじみ言いながら、有子さんは目を細めて私たちを眺めた。
別に咎めるつもりはなかったらしい。
単に騒ぐ私たちを見て、昔を懐かしく思ったようだ。
「マスターがクッキーあげるって言っていたから、もう少しだけ居てね。そろそろ持ってくるはずだから」
にっこり笑った有子さんに、私たちは目を真ん丸にして驚いた。
まさか、クッキーをくれるだなんて思いもしなかった。
「なんだかね、あなた達を見てると、マスターも楽しいみたい」
クスクス笑う有子さんに、私たちも笑った。
常連だからか、たまにこうしてサービスをしてくれるマスターと有子さん。
今日はまさかのクッキーのプレゼントだ。
ますます頭が上がらないのを感じながら、私たちは文字通り頭を下げた。
「いやはや申し訳ないです!!有子さん、マスター!!」
「いつもありがとうございます」
「本当、ありがとうございます有子さん、マスターさんも」
深々と頭を下げる私たちに、有子さんは本当に面白そうに肩を揺らして笑った。
「いやいや、いいの。君たちはマスターのお気に入りだから。もちろん、わたしもだけど」
クスクス笑って、有子さんはふとカウンターに目を向けた。
強面のマスターが可愛らしいラッピングが施されたクッキーを手に、私たちの側に寄ってきたのだ。
「マスター、ありがとうございます!!」
「わひゃー、クッキーだクッキーだ!!」
「スミマセン、こんなにもらって良いんですか?」
喜ぶ反面、お金も払わずにこんなにもらって良いのか不安がる私たち。
マスターはサングラスで良くわからない表情ながらも、ニヤリと笑ってくれた。
「どうせ余る予定だ。君たちがもらってくれた方がいくらも良いからね」
一見ヤクザみたいなマスターがそう言って笑うと、最初は戸惑っていた私たちもありがたく受けとることにした。
実花に至っては躊躇も迷いもなかったが。
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