―優奈―

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「実花。優奈をそこらのヤツと一緒にするな」 ピシャリと切り捨てる亜利沙。 実花は心底つまらなそうに目を半眼にさせ、可愛らしく舌打ちを突いた。 「ちぇ。でも、私の友達に居るんだよ。ネットで好きになった人と付き合ったりしたヤツ」 実花の友達は、とあるコミュニティサイトで知り合い、そのまま付き合ったらしい。 私には想像も出来ないものだ。 「へぇ、すごいね。今も続いてるの?その人たち」 素直に感心する私に、実花はけろっと笑った。 「いや、ソッコー別れたらしい。だいたい遠距離だったみたいだしね、そらそうだ」 頭の後ろで腕を組み、実花が楽しそうに笑う。 亜利沙が呆れたように眉をしかめた。 「それって付き合ったうちに入るのか?」 「さぁ?」 なんとも耳が痛い話だ。 若気の至りにも聞こえるそれに、私は苦笑をこぼした。 「はは。でも、私の通ってるチャットでは、あまりそういうのは見かけないかなぁ」 みんなバカ騒ぎを目的に来ているようで、甘い会話やそういう話は特に見かけない。 苦笑を溢す私に、亜利沙がどうでも良さそうにため息を吐いた。 「まあ、ネットで知り合って付き合うってケースがまずあり得ないから」 基本的に現実主義の亜利沙には、ネットという見えないコミュニケーションでの付き合いはあり得ないらしい。 まあ、私もその気持ちはすごくわかる。 見えもしない相手など、会話以上には仲良くなりえないのだ。 「そういうもんかなぁ」 未だつまらなそうにする実花。 亜利沙はまたもピシャリと切り捨てた。 「そういうもん。だって怖いじゃん。よく知りもしない相手と付き合うだなんて」 気味が悪い。 と、身震いする亜利沙に、私は頷く。 「まぁ、そうだけどさ。面白そうではあるじゃん?」 まだぶつぶつ言う実花に、亜利沙は呆れ顔で首を振った。 「あんたは怖いもの知らずだからな」 「まぁね」 二人のやり取りに笑いながら、私はしみじみ頷いた。 「世の中色んな人が居るんだねぇ」 ネットで付き合ったりなんて、きっと私には出来ない。 だって、ネットの中ではいくらでも自分を偽れるのだ。 相手が本当はどんな人なのか、きっと会話だけでは知り得ない。 何しろ人の本質なんて、自分の事さえも良くわからないのだから……。  
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