ボツ話①

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「ん?奈美ちゃんどうしたの?どこか分からないところでもある?教えようか?」 うん。失敗した。まさか多輝がいるとは思わなかった。 あたしを見つけた多輝は当たり前のように隣に座る。最初は反発したけど、ニコニコと笑いながらかわすため、もう諦めてしまった。 時間の無駄だ。 「いや、そうじゃなくて、人が近くにいると集中出来ないんだけど・・・」 というか、近すぎ。向かい側か、せめて一席分空けて座って欲しい。めちゃくちゃすいてるんだから。 映画館か!ってツッコミたくなるくらい近い。 「ごめん、なるべく近くにいたいんだよね。・・・むしろ四六時中一緒にいたい。家に保存したい。」 え?何それ?脅し? にこやかに言ってのける多輝に恐怖しか湧かない。 てか、保存って・・・ 同居の間違いだろ。あたしは物か。 とりあえず聞かなかったことにして、復習を再開した。 でもやっぱり集中出来なくて、多輝をチラリと横目で見てみると、いつの間にか向かい側のテレビに釘付けになっているみたいだ。 何となく多輝がテレビに夢中になるイメージが湧かなくて、何の番組なのか確認しようとすると、 隣からボソッと呟く多輝の独り言が聞こえてしまった。
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