序章

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――憎い。 私を、鬼とともに殺した――源氏が。 平氏は私のほこりだった。なのに。 何故……何故、滅ぼされなければならなかったのだ? ――私は鬼になる。 あやつらがいたから、我が家は滅んだのだ。 逃がすものか。 許すものか。 ――まだ、我が平家は散ってはおらぬのだ――。 儚げで、辛そうに唇を歪めた女が夜空を見つめる。 絶世の美女――そう表現できるくらいに、美しい姫君であった。 そして、女が憎しみに燃えた瞳を開けた。 強く、しかし、悲しい怨念だった。 桜には月の光が差し込み、それは気持ちを和ませるくらいに風流である。 女はまた桜を睨むと、降りゆく花びらを強く踏むのだった――。 .
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