2/4
前へ
/8ページ
次へ
うららかな春の昼下がり。 俺、円居と幼なじみの伶良は、俺の部屋にいた。いつもどおり、伶良も適当にくつろいでいるし、俺もひとり勝手にネットサーフィンしている。 そんな静かな午後のこと。 「円居」 「何、伶良?」 呼ばれて振り向くと、さっきまで俺のベッドを占領して分厚いハードカバーをめくっていた伶良が、俺の背後に立っていた。えらく不機嫌そうな顔をしている。 「どした?」 答えはない。おまけに、目もあわせてくれない。 沈黙。重たい空気が流れる。 いつも軽口叩きあってる俺達にあるまじきこの重苦しい空気を、 「円居、好き。」 破ったのは伶良だった。 「……え?」 伶良が、俺を、好き その意味に気がつくのに、たっぷり30秒はかかったと思う。 衝撃の事実を告げた伶良が、今度はしっかりと俺の目を捕えた。 「ほん、と?」 伶良は何も言わない。けれど、その真剣な目が、嘘なんかじゃないと訴えていた。 本当なんだな。ということは、俺も伝えなければならない。 そう思っても、なかなか開かない俺の口。さっきの伶良の長い沈黙の理由が理解できた。 幼なじみである俺に、それ以上の想いを伝えるため、覚悟を決めてまっすぐ向かってきた伶良。 そんな君が、 「好きだよ、伶良」 いつもの倍くらいの大きな目をして、伶良は固まってしまった。 振られると思っていたのかな。 柄にもなく緊張していた伶良。なんだか不思議な感じはするけれど、そんな伶良も、好きだ。 「俺と付き合ってください」 「……よろしくお願いします」 ずいぶん長いこと幼なじみをしてきたけれど、こんなしおらしい伶良、初めてだ。毒舌で、言いたいことはずばずば言っちゃう伶良がおとなしいなんて、ちょっと可笑しい。 「伶良にもこんな可愛いとこあるんだね」 そう言って、抱き寄せようとしたら、 「調子にのるな!」 トマトになった伶良に、力一杯腹を殴られた。 「痛いです伶良さん…」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加