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うららかな春の昼下がり。
俺、円居と幼なじみの伶良は、俺の部屋にいた。いつもどおり、伶良も適当にくつろいでいるし、俺もひとり勝手にネットサーフィンしている。
そんな静かな午後のこと。
「円居」
「何、伶良?」
呼ばれて振り向くと、さっきまで俺のベッドを占領して分厚いハードカバーをめくっていた伶良が、俺の背後に立っていた。えらく不機嫌そうな顔をしている。
「どした?」
答えはない。おまけに、目もあわせてくれない。
沈黙。重たい空気が流れる。
いつも軽口叩きあってる俺達にあるまじきこの重苦しい空気を、
「円居、好き。」
破ったのは伶良だった。
「……え?」
伶良が、俺を、好き
その意味に気がつくのに、たっぷり30秒はかかったと思う。
衝撃の事実を告げた伶良が、今度はしっかりと俺の目を捕えた。
「ほん、と?」
伶良は何も言わない。けれど、その真剣な目が、嘘なんかじゃないと訴えていた。
本当なんだな。ということは、俺も伝えなければならない。
そう思っても、なかなか開かない俺の口。さっきの伶良の長い沈黙の理由が理解できた。
幼なじみである俺に、それ以上の想いを伝えるため、覚悟を決めてまっすぐ向かってきた伶良。
そんな君が、
「好きだよ、伶良」
いつもの倍くらいの大きな目をして、伶良は固まってしまった。
振られると思っていたのかな。
柄にもなく緊張していた伶良。なんだか不思議な感じはするけれど、そんな伶良も、好きだ。
「俺と付き合ってください」
「……よろしくお願いします」
ずいぶん長いこと幼なじみをしてきたけれど、こんなしおらしい伶良、初めてだ。毒舌で、言いたいことはずばずば言っちゃう伶良がおとなしいなんて、ちょっと可笑しい。
「伶良にもこんな可愛いとこあるんだね」
そう言って、抱き寄せようとしたら、
「調子にのるな!」
トマトになった伶良に、力一杯腹を殴られた。
「痛いです伶良さん…」
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