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水の揺らぎは、光の揺らぎになって、私の体を照らした。
その時だけ、私は何もかもを忘れていた。
「風邪を引くよ。…そうだ、僕のうちに来る?」
海から出ると、びしょ濡れの私を見て彼は言った。
私は黙って頷いた。
「じゃあ、ハイ。」
笑顔で手を差し出す彼は、どうも悪い人に見えなかった。
思えば、その手はいつも私を救ってくれた。
彼の家へ、手を繋いで歩いた。
少しだけ、話もした。
彼の名前がシンということ。
ずっと一人で海の近くに暮らしていること。
私は、ナミという名前であることと、帰る場所がないことを伝えた。
そのうち、シンの家についた。
何もない部屋。
「はい、これ。」
シンは何かを渡してきた。
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