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今になって頭に浮かんでくるのはあの寒い朝の光景。
私は走っていた。
夢中で走っていた。
セーラー服のスカートが何度もひるかえり,
長い髪が風で後ろに追いやられる。
私の吐く息は空中を何度も短い間隔で白く色づけた。
「なんで追いかけてくるわけ?」
綺麗な黒髪をゆらしながら前を走る少年は突然振り向き,怪訝そうに私に問いかける。
「なんでだろう・・・。なんとなく?」
「はぁ?意味わからないし。もうついてくるなよ」
彼は私の答えにさらに気分を悪くしたようでさらに足を早め,私との距離を広げていく。
一方私は速度をゆっくりと落とし,そのままいったん立ち止まりつぶやいた。
「どうして追いかけてたんだろう」
私の吐く息がまた空中を白く色づけた。
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