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彼は何人かのクラスメートに囲まれていた。
自分から話すというよりは投げられた質問に答えているようだった。
けれど囲まれているため,顔がよく見えない。
-見えないかな。
そう思った瞬間男子生徒が叫んだ。
「次の授業金谷じゃん!!早く移動しないとキレられるぞ!」
その声を合図に一斉に彼からみんな離れる。
「・・・・・・」
綺麗な黒髪に整った顔立ち。
机には難しそうな一冊の本。
群れて騒ぐよりも一人でいる方が好きそう。
だからといって他人を寄せ付けないわけではなく,
誰とでも隔てなく関われるような不思議な雰囲気を持っている。
いつもぼんやりとしていて,人との間に壁を作ってしまう自分とは異なる種類の人間であり,さほど関わることもないだろうと思った。
けれど
今
いや
ついさっきまで
私は彼を追いかけていた。
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