それぞれの決意

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 ハリーの決断、皆の意志の強さと信頼。斬龍隊の士気が高まる中、井上の頭の中はすでに別世界だった。 焔 龍斗……、その名前が出た頃から、頭の中には彼のことしか思い浮かばなかった。 井上はすでに未亡人だった。 日陰隊長、婚約者だった青木 志雄の死は井上の心を閉ざし、感情を殺した。 日陰のナンバー2・北条院 雷電の裏切りと、ナンバー1・青木 志雄の死亡した事件後、井上は機密保持のため日陰を辞めさせられ、ASAのはぐれ部隊である斬龍隊へと左遷された。 最初、斬龍隊には馴染めなかった。馴染もうとはしなかった。日陰以外の存在など、井上には考えられなかったからだ。 だがしばらくして、この部隊がただの部隊ではないことに気づいた。皆何かしら、過去を持っていた人間なのだ。井上と同じ境遇の人間も居るのだろう。  そんな中、一人の青年が斬龍隊に来た。 それは運命的なものだと、井上は感じてしまったのだ。 焔 龍斗……、彼はあまりにも青木 志雄に似ていた。顔も考え方も性格も。自分より年下であることを除けば、青木自身と何ら変わりがないように見えた。  でも次第に、焔 龍斗という男が青木とは違うことに気づいた。龍斗は、青木とは違う優しさを持っていた。それは甘さなのかもしれないが、それでも、井上は龍斗のことをもっと知りたかった。 その優しさに甘えたかった。 出会ってしまったのだと、井上は気づいた。青木以上の存在に。もちろん青木は心から愛した人間だ。でも、それでも龍斗は、井上にとって特別な存在になっていた。  ──もう、幸せになってもいいんだぜ?── ある月の綺麗な夜、そんな青木の声が聞こえたのだ。自分の勝手な解釈かもしれないが、それは井上の縛っていたものを解いたのだ。  だが、井上の期待とは裏腹に、焔 龍斗は離反した。 彼のことをよく考えていたからこそ、その離反が過ちだとは思わなかった。 それでも、また大切な人間が離れていく、それが井上にはたまらなかった。
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