プロローグ

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 ──西暦2005年、夏。 イギリスのある町で、一人の少女が生き絶えた。 原因は虐め。それも、同級生同士だけでなく、大人までもが関わった悪質なものだった。 少女の名は『アリス・ガリュート』、その父親は倒産寸前の企業に勤める科学者『ベン・ガリュート』だ。  虐めの原因は父親、ベン・ガリュートの勤めていた企業にあった。その企業の製品がトラブルにより、何人もの犠牲者を出した。 そして社長は逃亡、責任を問われまいと重役全員がいなくなり、浮き彫りになってきた杜撰な生産体制。そんな中で生産の責任者だったのがベン・ガリュートだ。 だが、ベン自体がそのことを招いたわけではない。自体はもっと根本的な、社員全体に及んだ隠蔽工作だ。ベンはただ、形として責任者をやっていただけだったのだ。 だがそんなことを世論が知るわけもない。すぐに人殺しと騒ぎ立て、その矛先は家族に向けられる。当時、早くに母親を失っていたアリスは父親と二人暮らし。 父親のベンは仕事で帰りが遅く、そのため一人でいることが多かった。 そして事件は起きた……。 ベンが家に帰ると、見るも無惨な姿をした娘が横たわっていた。すでに息はなく、ぐったりとしていた。 明かな暴力を振るわれた傷。警察によってすぐに身辺を調べられ、そして出された結論が父親の虐待。 人殺しと噂されていたベンを、全員が最初から犯人と決めつけていた。
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