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ヘキサゴン近くの病院の一室に大石 遊弥の姿があった。ベッドに寝ているのは相澤 有希。さっきの戦闘で重傷を負い、この病院に運ばれたのだ。
幸い、命には別状もなく、手術もすぐに終わった。しかし本人の意識が戻らないため、もしかすると脳の方に障害が起きている可能性もあると、医師に伝えられたのだ。
大石は普段はふざけた性格の持ち主だが、こういう時にはまるで別人のように、暗く黙り込んでいた。
大石「──有希」
別に会話をしようと思ったわけではない。目の前で眠る相澤に、大石は語りかけるかのように呟きだした。
大石「家の決めたことで俺に許嫁がいるって聞かされたときは、正直うっとうしかった。まあ俺はこんな顔とこんな性格だからモテないけれどさ、それでも相手を選ぶ権利くらいあっても良かったと思うんだよ。
で、最初にお前に会ったとき、俺は父さんに『俺に犯罪を犯せとでも言うのか!?』って怒鳴ったんだよな。だってあの時、俺は22で有希はまだ6才だったから」
苦笑する大石。笑顔も上手く作れない。
大石「でもまあ、早いもんで10年経って見ると、お前はビックリするくらい変わってたよ。いや本当に。周りには気づかれないようにしてたけど、内心ではドキドキだ。まさかここまで可愛くなるとはね……。
でさ、その時思ったんだよ。親の決めたことで結婚するのは嫌だって言ってたけどコイツなら、てさ。でもさ、お前は16才だ。それに対して俺は32。歳が離れすぎだろ?有希だって嫌がるはずだ、こんなオッサンじゃあさ。もっと普通の恋愛をした方がいい。
なのにお前は、俺ばっかり見てたよな。まあ自意識過剰もしれないけど、ずっと俺についてきてた。
今さらだけど、お前は家の事も、俺のことも気にしないで、自由に生きた方がいいぞ?恋愛も好きにやったほうがいい。もっと楽しく生きるべきだ。だから──」
その時、大石の目から雫がこぼれた。
大石「頼むから、目を覚ましてくれよ……」
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