第一章 狼

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金色の長髪を二つに結んででいるその少女は、何も喋ることなく無表情で俺をジッと見ていた。 そのクリッとした目からは、心なしか哀愁が漂っている。 多分笑ったらすごく可愛いんだろうな。 名前も知らない少女を前に、俺はそんなくだらないことを考えていた。 しばらくの間、俺と少女は見つめ合っていた。 どれくらいたっただろう? 5分? 10分? 1時間? もっと長いような気がするし、1分さえもたってない気もしてきた。 ダメだ……この空間に来てから全てことがあやふやだ。 目の前の女の子が可愛いということ以外は…… なんだか自分が限りなくどうしようもない存在に思えてきた。
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