第一章 狼

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そもそも、なんで俺はこんな所に居るんだろう? 真っ白な空間には、何処にも入口なんてものはない。産まれた瞬間からここにいた様な気もしてきた。 ……埒が明かない。一先ず自分のことについて考えるのは辞めよう。 目の前の彼女は誰なのだろう? ずっと一緒だったような気がするのに名前さえ分からない。 この不思議な空間の中で、唯一はっきりと認識できる少女も、外見以外俺の知る所はなかった。 彼女は相変わらず、無表情で俺を見つめているだけで何も喋らなかった。 が── 不意に後ろに振り返り、俺の元から走り去っていった。
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