第一章 狼

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そう叫んだ瞬間。 遠くまで走っていた彼女の影がピタッと止まった。 ……案外、彼女は素直な性格なのかもしれない。 少女の影は、クルッとこちらに向いたと思ったら、今度はこちらに向かって走りだした。 先程まで走り去っていたことで視覚的に小さくなっていった少女は、こちらに向かって走って来ることで大きくなっていった。 そして、俺の目の前までくるとまたピタッと止まった。 (……なに?) 相変わらず無表情であったが、哀愁を漂わせていたその瞳は今度はそう俺に語っているように思えた。
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