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「それで?依頼の方はどうなったの?」
私にそう訪ねてくる顔は満面の笑みを湛えています。
ギルドと呼称されている依頼所。ここは依頼があれば報酬次第でその依頼を解決してくれる場所………つまり、〝何でも屋〟ですね。私がやっていることと色々と被ることがありますが今まで一度もいざこざが起こったことはありません。…というか、寧ろ逆と言ってしまってもいいかもしれないですね。
「もちろん速やかに運ばせていただきましたよ。」
昨夜のことをぼんやりと思い浮かべる。
私が半刻程で戻ると貴族の男性は、それはそれは驚いた顔をしていましたねぇ…………何故でしょう?
「やっぱりあなたの仕事は迅速よねぇ。どうやって〝凶龍の牙〟をこんな短時間で取って来れるのかは全然わかんないけど。」
そう言って妖艶に微笑みかけてくる〝彼女〟。
濃色とも言える程の濃い赤色の髪は肩甲骨辺りまで伸び、端正な顔立ちをしている〝彼女〟。椅子に座って机に肘を立てて掌の上に顎を乗せながらこちらを上目使いで見つめてくる姿はとても妖しい。
「それはいつも言っている筈ですよ?〝企業秘密〟です。それよりその格好はいけませんね。」
そろそろ言わなければなりませんね。
「ん?どこが?」
そう言ってわざとらしくこちらに見えるように豊満な胸の谷間を見せびらかし始めました。
「そうやって誰彼かまわず美貌を振りまくことですよ。あなたは独身女性なのですから周りから狙われてしまいますよ?」
「うん。そうするように仕向けてるからね。……特にア・ナ・タ・に…」
「…ご冗談を。」
「本当にそう思ってるの?」
立ち上がった彼女は私の身体を品定めするように見始めます。
「私はあなたにしかこうゆう態度はとらないのだけれど…」
「…………。」
「…だから、いい加減この暑そうなフードなんて外したら?」
そう。私は今もローブを着てフードを目深に被っているために鼻から下辺りしか周りには見えないでしょう。
「いいえ、それは止めておきますよ。」
私はフードを外そうと迫っていた手を軽く払いのけると部屋の出入り口たる一枚の扉の前まで歩き取っ手に手を掛けて止める。
「…では、またのご依頼をお待ちしていますよ。」
そう言い残して部屋を出て行きました。
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