運び屋

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黒いローブの男が部屋を出ていってから女性は暫く扉を名残惜しそうに見つめていたが… 「はぁ……あなたは本当に何者なのかしら…運び屋さん………」 溜め息混じりに呟かれたその言葉には確かな疑問が含まれていた………… † 今はまだ昼時、通りに立ち並ぶレストランからは食欲をくすぐる良い匂いが漂ってきています。 私は今一人で大通りを歩いています。昼時ともあってか人通りの多いメインロードですが、私の周囲には全く人が寄り付いては来ません。その理由として、第一に………と言いますか、これしかありません。 黒いローブを纏っているためです。 端から見れば、何やら怪しい人物としか見られないでしょう。 …まぁ、私としてはありがたいことですね。 「おや…いい匂いですね。」 そう呟いて足を向ける先には『パスタ』と書かれた看板が。 お昼ご飯はパスタに致しましょう。 「いらっしゃい…ませ。」 女性店員さんが元気良く言ってくれましたが、すぐに私の容姿に気付いたのでしょう。少し変な目で見られています。 「…お一人様でしょうか?」 それでもお客に気付かれないように態度は変えません。店員さんの鑑(かがみ)ですね。 頷いた私は店の一番奥に設置された席に通されました。ちなみにこの席はテラスに置かれているので景色は抜群です。 他のお客様にあまり私のことを意識させないための配慮でしょうね。恐れ入ります。 「では、お決まりになりましたら…」 「じゃあ、オススメの品を一品お願い出来ますか?」 女性店員さんは少し驚いたように目を開けたようですが、「かしこまりました。」と言って席を離れて行きました。 「ふ~…」 私はそれを確認すると椅子に深く腰掛け、真っ青な空を見上げます。 私の仕事は運び屋。 何日かおきに依頼をこなしている私ですが、達成率は常に100%です。……自慢ではありません。 先程ギルドでお会いした彼女。お若いながらもギルドマスターと言う重役を担っている有望株ですね。 私とギルドは持ちつ持たれつ。ギルドでこなせないような特別な依頼や私本人をご指名してくる依頼をギルドを介して請け負うのです。そうすればギルドの方にも多少なりとも報酬が入りますし……簡単に言えば、利害関係が一致しただけですが…
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