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プロローグ
黒の世界に緑のライン。
幾つもの光を越えた先に見える、ぼやけた風景。
手の届かないかけがえの無い絆と夢。
きっとこれは、忘却の未来。
忘れてはいけない氷の優しさは、僕の手で触れる事を拒まみ、忘れられない業火の強さは、僕を無理矢理遠ざけた。
そうこれは、忘却の未来。
目覚めたら蓋を閉じたように、忘れてしまう悪夢。
繰り返しみた、後悔の海。
忘れてはいけない夢なのに…
夢は結局、忘却の未来。
分かっている忘却の僕は、"彼"を見つめて必死に叫ぶ。
「絶対に忘れないから!」
"彼"は寂しげで、それでいてどこか物憂げな瞳を含ませて、消えゆく忘却の僕に見せた、始めて僕を認める優しい眼差しで別れの言葉を紡いでいた。
声は無音で、口はただ吹かない風に掻き消され、結局忘れる僕の胸をただ、意味無く締め付ける。
きっと愚かな僕は忘れるだろう。
そう、夢の狭間の忘却の未来は、ただただ僕を落としていく。
その狭間と最果てを越えたらもう、手に戻らない絆は…結局…、夢。
光に飲まれて、何度もまた繰り返す僕は…、忘却の愚か者。
でもきっとこれもまた忘れてゆく…。
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