302号室の朝。

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目を覚ますと、見慣れない白い天井が目に入る。 薄いカーテンを引いた窓からは朝日が差し込んでいた。 (…そか、引っ越したんだった。) 日並 刹那(ひなみ せつな)は、今年の春、高校に入学したばかりの至って普通の女子高生。 進学した高校が実家からの通学には遠いため、学校に近いこの古いアパートの一室を借りている。 もう引っ越して一週間はたつが、未だに寝起きだと部屋に違和感を感じていた。 枕元の時計で時間を確かめようと上半身を起こすと、ズキリと頭痛がはしった。 (っつ~…) とっさに両手で頭をおさえたとき、さらなる異変に気付いた。 …制服のままだ。 昨日、制服のまま寝たのだろうか…。 頭痛が酷くて思い出せない。 それどころか、昨日の夕方以降の記憶がない…。 「ん…起きた?」 思い出そうと頭を悩ませていると、壁の方から男の声がした。
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