302号室の朝。

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ひとり暮らしなのだから、当然この部屋には自分1人しか居ないはずなのだが。 恐る恐る振り向くと、自分が寝ていたそのベッドの壁際に見知らない男が寝転んでいる。 「…。」 内心叫びたいほど驚いているのだか、咄嗟に声が出てこない。 「…聞いてんの?」 目が隠れる程伸びた黒髪に痩身のその男は、自分を見たまま動かない刹那に問いかけた。 「だ、誰ですかあなた、ひとの部屋勝手に入らないでっ!」 少し冷えてきた頭で、思い付いた事を片っ端から言い放った。 「…。」 今度は男の方が呆然と此方を見る。 「し、っしかも人のベッドで寝るなんて私女の子なのにありえっ」 「あのさ。」 息つく間も無く言い立てる刹那の言葉を遮って、男は言った。 「ここ、俺の部屋だから。」
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