プロローグ

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ごくごく普通。 それがどんなに有り難いことか俺はこれっぽっちも分かってなかった。 例えばアレだろう。最近流行ってるカラフルな色の髪をして目のでかい女が文庫本の表紙にでかでかと描かれている、そんな本達だ。どこの本屋も特別な事情がなけりゃそいつらにスペースを割いてるような。 ライトノベル、略してラノベっていうらしいんだが…ああ、こんなことはどうでもいいな。 俺が言いたいのはラノベの表紙や名称についてのことじゃなく、内容についてなんだ。 よくあるだろ?宇宙人やゾンビやら異世界人やら勇者やら魔王やら…そいつらが大抵事件やなんやらを起こして普遍普通凡庸な主人公がそれ巻き込まれたり。 そして極めつけはヒロイン、もしくは上記のこいつらが美少女だったりと、そんな現実では有り得ないような事に人は心惹かれる。 あー…つまり、なんだ…。 そう、俺もラノベなんか読んでなくてもさ正直望んでたさ、そんなことを――― 「ってな」 桜並木の通学路で脳内のジョン・ドゥに語りかけながら新入生にお約束ともいえる花吹雪を浴びつつ俺は粛々と学校への一歩を踏み出す間にそう呟いた。 学校までの歩道にはピンク色の絨毯が春風にあおられてちぎれたりくっつきあったり小山を形成したりしていて、高校入学という人生三度目の新たなスタートを切った高揚感をさらに押し上げてくれた。俗に言うテンションが上がるっつうやつだ。 妙にほてった感じのする顔に手を当ててみると、成る程。たしかに熱い。
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