えすぷれっそ

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 妃は、二十八歳。会社勤めの大の大人。ルームシェアをしている、この血の繋がらない一家の最年長で一番の稼ぎ頭だ。 「待て。なんの話だ」と間宮。お腹が空いているのか、フレークをしっかり頬張りながらも反論しようとする。 「間宮の酒癖が酷えから、なんか色々面倒な事になっちまったんだろ。カナの気持ち利用して、オナニープレイに付き合わせてんじゃねぇよっ!」と、金髪の男がそう言う。彼は二十四歳の大学院生。つり目で態度はでかいし言葉も乱暴でふけ顔だが、根はまともで優しい。辰賀 翔(しんが かける)。 「ちょっと待てって。カナがなんだって?」 「だから。前にカナが、酔った間宮に手錠したり縄で縛ったりしてたじゃん。あれはお前が悪酔いし過ぎてゆめの事からかってつねったり部屋で暴れたりしたから仕方なくやったんだっつの」  辰賀のその発言を、ウンウンと頷きながら聞く妃。 「うそだろ」 「ホントだよー。でも覚えてないんでしょ? あ、あと酔ってる時って間宮にはいつもゆめがネコに。カナがゆめに見えてるらしいよ」  そう説明する妃の目は、呆れて笑っている。 「はあ……そうか」 「信じてねえな、妃もう間宮マジあほだ」 「あほー」 「俺がそんな事する訳無いだろ。」 「うーん。あ、動画見る? 証拠はいくらでもありまっせ」  カパリと開いた妃の真っ黄色の携帯電話。間宮はそこに映し出されている泥酔状態の自分をじっと見る。 「他人のそら似かも知れない」 「同じ顔で同じメガネしてお前が持ってる服着てんのに?」 「覚えてないんだよな……酔ってる時の事って。ホントにこれ、俺か? 猿みたいだぞ」 「どう見たってお前だろ。この猿! もう結構時間経ってるけどもさ。カナに謝った方がいーんじゃね?」  辰賀に睨まれそう言われるが、まだ良く意味のわからない間宮。妃に携帯を返す。 「なんでこんな事してたって、もっとはやくに教えてくれなかったんだよ」
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