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「口に出してわざわざ話すような事じゃ無いでしょ。僕は言わない方が良いって思ったけどさ、」
「カナが間宮には言うなって言ったからだよ。お前の事、好きだから。側に居られるんなら、なんでも良かったんだって。一瞬でも特別扱いされるんなら。たとえゆめと間違えられて、何度抱かれても構わないって! そう……言ってたよ」
「……笑えない話だな」
「「笑えねーよホント」」
いつまでも無表情の間宮は、食事を終わらし立ち上がり食器を食洗機の中に入れる。
吐こうとした溜め息を歯の裏側に止め、ぱっと振り返り二人に、
「だから……俺とカナって付き合ってたのか?」と一言発する。
「そーだよ」と投げやりに返答する辰賀と、ウンウン頷く妃。
「そうか。だから変な記憶があるのか……わかった。ありがとう、話してくれて。迷惑掛けたな」
その言葉にも返答したり、他にも言いたい事が山のようにあった。でも口をつむぐ二人。間宮をこれ以上責めたって仕方ない。こいつは嘘は吐かない男だ。本人がしようとしてやった行為では無いのだし。カナよりも、間宮が本気で好いているのはゆめだって事を二人は痛いほど毎日感じていたから。
硬い鎖で何十にも封じてある様な間宮の悲しい心に、暖かい風を吹かせているのはいつだって、ゆめという存在があるからだと知っていたからこそ。これ以上は責めたくない。
でもけじめはつけて欲しいと思うのは、家族であり仲間だから。
二人のその気遣いを噛み締めるように少しの間静止し、そしてリビングを出て自分の部屋に戻ってしまう間宮が、「あ、今日――お前ら帰り遅いのか?」と去り際にそれだけ訊いた。
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